ロジャー・バートとブラッド・オスカーの、インターネットラジオ・インタビュー

アメリカン・シアター・ウィングのネットラジオで流された、ロジャー・バートとブラッド・オスカーのインタビューポッドキャスティングでも聴くことができる。このインタビューは、時期的にも、また組み合わせ的にも大変興味深い。

時期は、2004年5月、"The Producers"、ネイサン・マシュー・ゲイリー・ロジャーの限定復帰公演直後、しかもその公演ではそれぞれマックスとレオのスタンバイという、大変なプレッシャーを受ける仕事もつとめ、天井知らずのチケットが飛びまくる嵐のような季節が終わったあと、おのおの二度目のリプレイスメントであるマックスとレオをコンビで引き受けたばかり。

組み合わせとしては、ともにオリジナル・プロダクション初期からのメンバーであり、マックスとレオ以外の役のオリジナル・キャストであり(厳密には、オスカーはプレビュー途中からオリジナル・フランツのオーバックがケガをしたために上がり、そのまま本役となった)、かつ、ともにオリジナルの役でトニー賞助演男優賞にノミネートされた、という共通点を持つ。

おのおのの発言内容も十分面白いのだが、二人の性格の違いがまたおかしい。基本的に二人とも真面目な人なのだが、かなり神経質で発言内容もスムースできちんとしていなければ気がすまないブラッドと、常にジョークを交えてベテランらしい余裕の受け答えを見せながら、一度うろたえるとしばし時間が止まってしまうロジャー。

もっとヒアリングができればなあ、と残念だが、かろうじてわかるところだけでも、宝物のような言葉が拾える。もちろん、それすら聞き間違っている可能性、大、なのだが。以下、ロジャーの発言から抜粋。

  • かつての自分の役(カルメン)とステージで対面して、しかも彼がうまくて大ウケしていると、ちょっとジェラシー(笑)。でも素晴らしく嬉しい体験。
  • 他の人の台詞を聞いていてカルメンの番が来ると「あれっ、僕の台詞?」と混乱したことはある。それだけ身体に台詞が入っている。
  • うっかり、レオ・ブルームは絶対しない、カルメンの仕草をしそうになったこともある。
  • ネイサンとマシューが戻ってきたとき、カルメンからレオ、レオからまたカルメンに戻ったので、さらに混乱した。改めてマシューのレオに、カルメンとして対面しながら「自分がレオの時、マシューのように素晴らしいレオを演じられているだろうか」と考えてしまったり。
  • とにかく、オリジナル(マシューの)キャラクターの作り込みが優れていた上に、一年以上、毎日マシューのレオを聞き込んでしまったため、2002年12月、レオとして初めてステージに立ってすぐ見に来てくれた友達が「ロジャー、マシューの真似をしようとしちゃだめだよ」と言ってくれたが、その時点ではどうしようもなかった。「自分のレオ」を作り上げるには、数週間から、もしかすると二ヶ月近くかかったかもしれない。


ロジャーもブラッドも、オリジナルキャストの言葉に尽くせぬ偉大さ、そしてそれを引き継ぐ光栄と同時に、課題として与えられた超えねばならぬ壁の高さとの苦闘、またスーザン・ストローマン、メル・ブルックスの魅力についても繰り返し語っている。


以下は、他のインタビュー等からの情報も織り交ぜて。


ロジャーはオリジナルキャスト時に一度もマシューのアンダースタディ/スタンバイをやっていない。完全に、カルメン役に徹していた。トニー賞前後の記事を見るとかなり早い時期に「いずれレオをやってもらう」類のことは言われていたようなので、当然いつか来るその日のためもあったであろうが、基本的にこのプロダクション自体が大好きで、カルメンの出番がない時間は、ひたすらスピーカーから流れてくるすべての台詞、とりわけマシューのレオの台詞を聞いていたらしい。

対してブラッドには、そんな余裕はない。そもそもネイサンのアンダースタディから入ったので、フランツとして毎日舞台を務めつつ、今日たったいますぐにでもネイサンの代わりにステージに立ち、お客さんを満足させなければならないのだ。ネイサンの台詞、イントネーション、間、仕草……すべてがからだに入っており、特に台詞は「ネイサンの台詞+爆笑つき」でセットになって覚えているので、自分がその台詞を言って笑いが少ないと、かなりつらいものがあるらしい。ブラッドがいかにネイサンを尊敬し、憧れているか、切なくなるほど伝わってくる。

聞いている限り、実はロジャーのマックス、ブラッドのレオの方が人に合っているのではないかと思えるほど(実際にその役が合う、という意味ではない)、性格が異なるふたりのインタビューは、何度聞いても面白い。かなり確信的にロジャーがブラッドを「釣って」いるとおぼしき所もある。MCからの話題が軽く時代考証的な話になり、ロジャーが独り言のように「1959年にビレッジ・ピープルっていうのも……」とつぶやくと、まんまとブラッドが反応して「それはそうだけど、そういうことを言い出すと、ちょっと、あのねえ……」。微笑ましいボケとツッコミ。

余談だが、モノマネの得意なロジャーの「稽古場におけるメル・ブルックスの言葉 "You've ruined my masterpiece!"」は定番中の定番で、いろいろなインタビューで聞けるが、2001年頃よりずっとグレードアップして、声自体までかなりそっくりになっているのも笑える。


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