Roger Bart in The Producers (3)

【3回目】1月13日(土)昼

※危険。長文。大変な長文。バカみたいな長文。他の方に読んでいただくのだ、という配慮に、かなり欠けています。自分が見た、大切な宝物を忘れたくないから書いてるだけかもしれません。よほど暇な方だけ先にお進みください。もちろん、完全なネタバレです。




昼前に劇場のボックスオフィスをのぞきに行く。

やった! 演者変更ボードに、レオの名前はない!! 即、その場で友人と二人分の夜のチケット購入。友人はその足で五番街などに買い物へ。

昼の部。日本で取った席は、C列107番。これ、本当にまんまん中。センターのバミりの位置。すげえー!

さて、今日の分でほとんど書ききってしまうつもり。今日書いたギャグや台詞は、たぶんほとんど木曜にもあったはず。でも、この公演があまりにもいきいきしていたから、こっちで書きます。

King of Broadwayから、今日のトニーはさらにいいぞ、って感じ。頑張ってるぞ、トニー・ダンザ。土曜ということもあって、トニー目当てのお客さんでいっぱいだし、ノリも最高。今日はかなり期待できるかも。新宿コマだって、本当にいい芝居で盛り上がることもあるんだ!←当たり前だ!

神経質なノックの音がして、レオ登場。先ほどまでの「きゃー! 生トニー!」の雰囲気がすっ、と変わる。芝居の空間になる。ドアが叩いた勢いで開いてしまって、こそっ、とのぞき込んだレオ、おどおど入ってきて、きょろきょろとではなく、目と眉の動きだけでほんのちょっと部屋の中を見回す。芝居のポスターや写真がいっぱい。口元が少しゆるんで、ひっそり喜んでいる。ちなみに、ドアの、レオが神経質にノックする部分、色がはげ、白くなっていたのがおかしかった。歴代レオが叩き続けてきたしるし、なんだろうな。

おどおどしながら、少しずつ部屋に入っていくレオ。ガバッと飛び起きるマックス。固まるレオ。固まったまま、ひょこ、ひょこ、ひょこ、とドアに追い込まれていく。顔も固まったまんま。

"Scared! Can't talk!"

で、レオ最初の爆笑。深呼吸して、と言われて、Barrrrr....と羊鳴き。そのままI'm Leopold Bloom...のくだりも羊の声でしゃべる。羊の声って(笑)。

そして、Madelein Dohertyのホールドミー・タッチミー登場。いやー、すごい。もう、このおばあちゃんはすごい。喋る前に舌をレロレロさせたり、お尻を振ったりするところなんか相当下品なんだけど、笑える。大爆笑。彼女に、たっぷりの間でOne dirty game、と言われると、ほんとにイヤラシイゲームっぽくてすさまじい。マックスとのくだりが終わって帰るとき、彼女、ドアの横に激突。もちろんお約束ギャグなんだけどアドリブっぽく見えるので客席から悲鳴と笑い声。ようやくホールドミー・タッチミーを追い出して「はぁーー」とドアにもたれかかるトニーに拍手が。

さて、マックスとレオ。今日は木曜と全然違う。マックスにも勢いがある。もちろん歴代のマックスと比べてはいけない。これは新宿コマのトニー・ダンザ・ショーなんだから。でも、今日のロジャー・バートは、木曜と比べものにならないぐらい、どんどんマックスに向かって「さあ、来い!」と「仕掛けて」ゆく。それは、トニーにも余裕があるのがわかるからだろう。

ベタなギャグも入っていた。「僕、実は、プロデューサーになりたかったんです」というくだり、「プロデュ……プロ……プロ……プロデュ……」「プロデューサー?」「それです」という、プロデューサーって単語が言えない、というギャグ。ロジャーで3回見たけど、ちょっとこれはベタすぎたのか単に未成熟なギャグなのか、あまりウケてなかった(笑)。

ブルーブランケットは木曜よりだいぶ長くやっていた。それでも5秒ぐらいかな。これはもちろん大爆笑。

"Blanket....MY BLUE BLANKET!!!"

机でしおしおと計算をしていた低〜いテンションから、一気に感情の温度計は沸点を突破。その感情沸騰のスピードに客席もドッと持って行かれる。ロジャーのレオがさらにおかしいのはその後。金切り声で叫んで毛布を返してもらって、はぁぁぁぁぁー……という感じで毛布で顔をなでながら、ふとマックスの視線に気づき、気まずい雰囲気を笑顔でごまかしつつ、申し訳なさそうにかわいらしく、すごく低く硬い冷静な声で、

"...I'm sorry"

これだけでバカ受けするんだからたまらない。「かわいい慇懃無礼」というアンビバレンツはどうしようもなくおかしい。ロジャーの声のレンジがすごいのは知っていたけど、うーむ、低音から高音、アナウンサーのような冷静な声音とぶち切れたはっちゃけ声に子どもみたいな声。自由自在に使われたら、かなりクるなあこれ、とワクワク! 横になってごくごく小さな声で「ママ……ママ……」と言われた日には、そのまま家に連れて帰りたくなりましたね。誘拐かよ!

ヒステリカルのくだりも、トニーとロジャーの組み合わせでは完璧なできだったんじゃないかしら。水も命中したし(笑)。ロジャーのレオのヒステリーは、ayayayayayayayayayayayay……って感じで震えが止まらない。止まったと思ったら、マックスの顔を見てまた、ayayayayayayayayayayayay……これにはマックスも困り果てる。「僕のかわいい会計士ちゃんは誰かなー?」で機嫌を直そうとする。初めはおびえていたレオ、少し機嫌を直してはまたおびえ、ayayayaya……そしてマックスに怒り、マックスがあやし、それを何回か繰り返し、だんだん機嫌が良くなって、最後はソファの陰にかくれて、そっと顔を出し、マックスとかくれんぼしてるつもりらしい。喜んだバカなワンコのようにパカッと開いた口が、もう、かわいいよ、バカっ(爆)!

We Can Do It。

大好きな曲だが、トニー、最初の音を取ってくれないのは悲しい。喋るように歌うのはかまわないのだが、最初の音だけは取ってほしいな。ここでもロジャーの的確な間と冷静な顔と声での、

"What'd they say?"

がウケる。気になってるんじゃん、レオ(笑)。そして、マックスに「さあ、どうする?」と言われて「どうしよう、プロデューサーになれるなんて、どうしよう、夢が叶うなんて、どうしよう、どうしよう……!」の後、

"I can't do it..."

は割合普通に歌ってしまう。そこで笑いは来ない。だが、

"I'm a looser, I'm a coward, I'm a chicken, don't you see?"

と歌っていく間に、顔も体つきもどんどん情けなくなっていき、その変化を見て次第に笑いが起きてくる。なるほど、ここでこう取るか。

マックスとレオの歌の掛け合いも楽しい。ロジャーの声がとにかく良く通るので、トニーの声量が足りない分を補っている。かといって、ロジャーの声だけが聞こえるわけでない。このあたりは音響さんの手腕でもあるのかも。

そして、Unhappy。黒人会計士の、アンクルトムズケビンと言うべきかビッグリバーと言うべきか、「奴隷ネタギャグ」にしびれる。強烈なことやってるんだなあ。会計士のコーラスが終わって、いよいよI Wanna Be A Producerへ。

もう……これはもう、すごい! ただすごい!

こそこそとハットとケインを取り出しての歌い始めは、やや挙動不審で目は宙を泳ぎ、唄い方もこそこそ、おどおど、とした感じ。「あいわなびーあ、ぷろでゅーさっ」みたいな(笑)。こんなこと僕みたいな人間が言っちゃっていいのかな、プロデューサーになりたいんだけど、いいのかな、でも、もう言っちゃったしな、いいか、いいな、いいんだよ! だってなりたいんだもんね!……って感じで一人で盛り上がったところへ、真珠の踊り子さんたち登場。そして、出ましたっっ!!

"And say you, you, you(不適切な踊り子を見て)ワンワンワンワンワォーーーン!...not you!"

わあああー、スヌーピー・バークだあー(爆)! 遠吠えしながら半回転! いや、木曜もやってて大ウケしたんだけど、今日はもう、冒頭からのノリがいいから、劇場が揺れるかと思うほどの大爆笑! もうこれ、去年の6月にもうひとりの管理人である相棒から聞いたときから、絶対見たくて見たくてたまらなかったんだ。スヌーピー・ロジャー!

「僕の名前がライトサインで輝くんだ……」のくだりの後、ゆっくり手を挙げて顔を少しずつ上げながら、ゆっくりゆっくり表情が変わっていく。明らかに、今までにない輝きになってゆく。そこからはもう、夢とは言え、ショービジネスの空間にいるのが嬉しくて嬉しくてたまらないレオ!

ダンスが美しいー! 華麗に踊るわけじゃない。重心の低い、クラシカルでコミカルなステップ。でも、コミカルなまま、まったく軸のぶれない三回転とかさりげなく見せられると卒倒しそうになる。コミカルなのに、真珠のダンサー達と完全にシンクロしたダンス。大きな腕の振りと、美しい手首の返し。軽やかにベタなステップ。ちょっと得意げで心から楽しそうな笑顔。

"Sell it girls!"

でも確実に笑いを取ってくる。なんでだろう。アンダーの彼も同じ間で同じ事を言ったのに、なんの反応もなかったなあ。ああいうのってなんなんだろう。

そしてピークがやってくる。得意の絶頂。

"I wanna be a producer!"

両手を大きく広げ、その目はバルコニーの向こうに虹を見て、満面の笑みとともに体中から喜びがあふれ、良く伸びる高音が劇場中に響く! 

真珠の女の子達が後ろから、ハット、マフラー、葉巻、シャンパングラスを奪う。照明が変わる。

1秒かからなかった。一瞬前まで、カクテル光線の中で得意の絶頂だったレオは、ひとかけらも自信のない、「世界で一番かわいそうな人」になっていた。

うーん、すごい。すごいよー、ロジャー・バート! この的確で自由自在な心理表現と変化の早さは、どこから出てくるの??

背中を丸め、とぼとぼと席に戻って、

"I wanna be a producer...."

さっきとは180度違うトーンでつぶやくように唄う最後の歌詞。ショーストッパー。大歓声。いやー、そりゃ、拍手したがり、笑いたがりの新宿コマのお客さんだけど、今の一曲、かなりレベルの高いもの見ちゃったってのはわかるに決まってる。あまりの大歓声と拍手に、レオ、次に行くときは大声で「待てよ! 待てよ!」って叫び続けていた(笑)。

ミスター・マークスに「やめます!」と告げるパート。全体に、大声の早口で展開させる。「あんたは一つだけ正しいことを言った! たしかにあんたはCPAだ!」。さらに大声でがなりたてるように早口で叫ぶ!

"Certified! Public!"

そして、セサミストリートカーミットをさらに間抜けにしたような抜けた声で、

あーすほぉーる」

いわゆる、ずっこける、ってやつです。舞台の上も下も、劇場全体がずっこけた。大爆笑。

そしてリプライズ。ミスター・マークスがしっぽを巻いて逃げてゆき、真珠のダンサー達もそれぞれの場所にはけて、コートとアタッシェを持ったレオが唄いきる。ショーストッパー。

ものすごい大歓声と拍手。見事なセットチェンジですでに後ろはマックスの事務所。神様に祈った姿勢のままのマックスに駆け寄り、さて、マックスに声をかけよう、というときも、まだ拍手が止まない(笑)。声を限りに、大声で叫んでました。笑顔で(笑)!

"Mr.Bialystock! I'm back! I've changed my mind!"

レオが戻ってきて嬉しそうなマックスの顔もとてもいい。二人のダンスもとてもいい。これはいいコンビになるぞ、という予感をさせる。

"We are fated, to be mated"

そう、同志になる運命だったんだ、って唄うところ、すごくいい。書き割りの後ろに本水の噴水が上がって、暗転。

ここは5秒から7秒ぐらいかなあ。その間に事務所に山のような脚本が登場するセットチェンジの手際の良さにも感動。マックスはソファに寝ころんで脚本を読んでいる。レオは……暗転の間、闇の中を机に向かって歩きながらメガネをかけ、上着を脱ぎ、脱いだ上着を椅子の背もたれに掛けて座り、一回自分の髪の毛を「くしゃっ」とさせて……

レオは、机に座って脚本を読んでるんだけど……たった数秒の間に一晩経過したのがはっきりわかる。何度も同じ事を書いてしまうけど、ロジャー・バートは場の空気を変えてしまうのだ。今、この事務所の中は、完全に徹夜した空気だ。もちろん、アンダーくんのときはまったくそんな空気はなかったのに。「マックス……」とかける声も、心底情けなく、憔悴している。

もうひとつ。これも想像していた通り、というか、想像を超えてうれしかったのが「曇りガラス」。なぜ? なぜあんなに無念そうに、"What's it called, what's it called....A frosted glass!"って言えるの? 人生の一大事みたいに無念の表情をしちゃうの? 大爆笑です、ここも。ここ、大好きな台詞だから、台詞で爆笑を取るところを生で見たかった。見られました。見せてくれました。うーん、また惚れた。

最低の脚本を見つけて出かける直前。帽子を貸して、というレオに、マックスが「ダメだ。なぜならこれは、ブロードウェイ・プロデューサーの帽子だから」というところ、トニー、なかなか貫禄ありました。やればできるんじゃん。さすが昔は大スター(ごめんなさい)。

フランツ・リープキン。もう、ビルさん最高ー! 今まで見たフランツの中で、最高! 今まで見たって、映画と、レコーディング・ザ・プロデューサーズのブラッドと、あとは某所とか某所とか某所とか某所とかに存在していたイケナイビデオぐらいですけど、とにかくいい。コミカルなのに硬質なところのある芝居がホントにいい。ただおかしいだけではなく、芯の強さがある。バカなのに芯が強いって、えらくおかしいです。しかも歌が桁外れにうまい。このどっしり感は、年齢的なものもあるかもしれない。

ここのマックスとレオのコンビ芸は、かなりうまくはまっていた。上手から、フランツ、レオ、マックスと並んで、フランツがレオにBBCがなんたらとがなりたてるシーン。大声を出されるたびに、レオは少し、引く。背中を反らす。すると、後ろにへばりついていたマックスが、そっとその背中を押してまっすぐに戻す。定番のギャグだけど、こういうのは意外に難しいものです。トニー、雰囲気が良かった。

なんというか、トニー・ダンザ、この一ヶ月近くで、ロジャー・バートのレオと、かなりいい関係を作り上げることができたのかな、って感じ。あれだけの大スターで、かなりプライドの高い人らしい、と聞いている。いくら相手がステージのベテランとは言え、十歳以上年下の役者に頼るなんて、なかなかプライドが許さないはず。でも、トニーはそこを振り切っていた。自分だけウケればいい、なんて芝居じゃなかった。ロジャーに頼るところは頼り、二人でいい芝居を作ろうとしていた。だからわたしはよけいに、トニー・ダンザのマックスを、買いたいのです。

ここのシーンも舞台ならではのロジャーの芝居が楽しみだったけど、はるかに予想以上。ほんっっっっっっとに嫌いなんだな、ナチ(爆)。「ドイツのヘルメットかぶって半ズボンはいてる……」とつぶやくだけで笑いが起きる。その言い方が、のどをしめて絞り出すような声で……(笑)。

ナチ大嫌いなのに、マックスに「台本のためだ!」と言われてイヤイヤ唄ったり踊ったり。もう、ほんとに嫌がってるのがありありとわかって、ただただおかしい。しかも、踊り出すとうっかり楽しくなっちゃったりする。そしてフランツに叩かれたり突き飛ばされたりして、ハッと我に返って自己嫌悪。そんな芝居がおかしくてたまらない。中でも、冒頭、鳩のアドルフが敬礼したときの、驚愕と嫌悪と恐怖の入り交じったリアクションが、切れ味といい表現といい最高だった。

エリザベスのくだりは、トニーの解釈がかなり違うなあ。Really?の言い方は絶対あれじゃない。言い終わるやいなや、レオの腕をあげさせるのだけど、マックスが上げさせてる、とは、流れ的にもタイミング的にも、どうしても見えない。そのせいなのかどうかはわからないけど、二人が「……エイドルフ」としゃべり出すまでの間合い、ロジャーのレオは目をつぶって深呼吸するような演技で一人の間を作っている。しかたないのかな。大切なところなのに、残念。

そして、暗転してカルメン・ギア登場。マスグローブくんのカルメン、ホントにかわいくて歌も踊りもうまくていいのだけど、いかんせん、「変」じゃないんだよねー。木曜にも書いたけど。でもそれはデ・ブリーとのコンビネーションで出るものかもしれなくて。

ゲイリー・ビーチがインタビューで「カルメンとロジャーは、登場したとき、お客さんを少し引かせるぐらいでいい。怖がらせてもいい。そしてコンガの頃には、ぼく達と一緒に食事に行きたい、と思わせるんだ」というようなことを語っていたけど、それ、難しいです。確かに、ゲイリーとロジャーのコンビはそれができていた。「変」だったもん、思いっきり。だけどかわいかった。愛しかった。二人の間に愛があり、客は友達になりたくなった。

ロジャーとカルメンって、同性愛者に見えることが一番大切なのではなく、二人の変な人の、深い深い信頼関係が大切なのではないかしら。この世でお互いの二人しか、わかってくれる人がいない。そんな運命的な二人。実は、マックスとレオもそうなんですよね。他の誰ともうまくいかない。この世でたった一人、自分と仲良くなれる人とめぐり逢った。そういう、二組のカップルの物語なんだ、このミュージカルは。

だとすると。リームスさんとマスグローブくんのロジャーとカルメンは、いまいちだなあ。ごめんなさい。特にリームスさんが、わたしは相当苦手かもしれない。とてもうまい。本当にうまいんだけど、うますぎちゃって、軽々と演じすぎてる、ような気がする。軽々と、粘っこく。あと、男前じゃない。ロジャー・デ・ブリーは、堂々たるステレオタイプのゲイで、しかも男前でなくちゃ!って、それもゲイリーでなきゃ望んではいけないことでしょうか。

これまたゲイリー・ビーチが言っていた。インタビューで「あなたはヒトラーも演じましたね」と言われて「いや、僕はヒトラーやってないよ。ヒトラーを演じたのは、ロジャー・デ・ブリーだ」って。

リームスさんのヒトラーは、リームスさんのヒトラーにしか見えませんでした。そして、リームスさんは、とてもとてもうまく「ステレオタイプなゲイの演出家」を演じていました。でも、それは「ステレオタイプな同性愛者をうまく演じた」だけで、ロジャー・デ・ブリーという人、恋人でアシスタントのカルメン・ギアという人への思い入れが見えなかった。実は「ステレオタイプなゲイのロジャーとカルメン」って、そのバックグラウンドが大きいのに。

断定してしまうのは危険かもしれないけれど、4回見て4回ともそうだったので、申し訳ありません、リームスさん。ごめんなさい。

マスグローブくんは、ゲイリーと組んでいたとき、とてもよかった、という話を聞いている。だから、相手によるのかもしれないなあ。向こうの掲示板でかなり評判いいです、マスグローブくん。

おっと、ロジャーとカルメンのことになると、やっぱり語ってしまう。話を舞台に戻しましょう。

イエースーーーーーーーーはもちろん大爆笑! きょろきょろするマックスとレオの反応もいい。

デ・ブリーの館に入ったレオが室内を物珍しげに見回しながら立ち止まり、ふと前を見るとすごく近いところにカルメンの顔。日本のお笑いでよく見る「ギョッ」としたようないかにもなリアクションはない。礼儀正しいたたずまいのまま、わずかにあごを引くだけで一瞬、心臓がドキン、としたのを表し、「……なんか変なのがいる……」そのドキドキを押し隠すレオ。

ドキドキがそのまま、カルメンと、初代カルメンのご対面(笑)。意味のわからないお客さんがほとんどだったでしょうが、ひきつって笑いながらなんとも気まずいような嬉しいような顔をするロジャー・バートの演技と間に、わけもわからないまま笑ってました。マックスと小声で相談して、カルメンに向かって、コートの裾をつまんでバレエのようなお辞儀をするレオ。大爆笑。ここも定番ギャグだけど、自分の目で見られたのは嬉しかった!

そして、ああーっ、映画ではカットになった、伝説の、Walk this way, please!!

ヤング・フランケンシュタインで、マーティ・フェルドマン演じるアイゴールが、博士を案内するときに言う台詞!!

そもそも「Walk this way」は古いギャグらしい。wayに「方向」と「スタイル・やり方」の二義をとり、混同する、というギャグ。混同したところで笑いは完結し、それは間違ってますよ、と指摘したり流したりする形がオーソドックスなものらしい。ヤング・フランケンシュタインのギャグは、その一歩先を行き、「混同した上に、乗っかる」というもの。

ここでももちろん、マックスとレオが思いっきり、乗っかる(笑)。

カルメンに「こちらへどうぞ」と言われたマックス、フェミニンに手をちゃらちゃら振りまわして歩くカルメンを、オーバーに真似て後に続く。唖然とそれを見ていたレオ、一瞬後に意を決して、マックスよりさらにオーバーに手を振り回し、くねくねと小走りに追いかける。気配を感じてクルッ、と振り向き、自分の真似するレオを見て、バカにされた気分で心外そうににらみつけるカルメン。悔しそうなそのカルメンの真ん前でパーンと止まり、自分の醜態をどうおさめていいのかわからず途方にくれるレオ。このあたりのカルメンとレオのかけひき、ロジャーのカルメン、マシューのレオのとき、どんなふうにやったんだろう(笑)! あー、映画でも入れてほしかった!! 

インタビューで「(自分がレオを演じていて、目の前で自分のリプレイスメントの)カルメンが素晴らしく演じているのを見ると、ちょっとだけジェラシーを感じる(笑)。でも、これはホントに得難い、素晴らしい体験」と語っていたロジャー・バート。ブラッド・マスグローブくんのカルメンと向かい合うのは、かなり嬉しいだろうなあ。何しろ、ロジャー・バートが2002年12月に初めてレオでステップ・インしたとき、同時にステップ・インしたカルメンがブラッド・マスグローブ。つまり、ロジャーが初めて、舞台で顔を合わせた「カルメン」が彼。その後、何度かカルメンは変わっているが、結局マスグローブくんに戻ってきて、しかも掲示板を見る限り「リプレイスメントの中ではブラッドが最高」という声が大変多い。この二人の「ご対面」は、なかなかのみものでした。

今年秋オープンのヤング・フランケンシュタイン

リーディング・キャストのまま、ロジャー・バートがアイゴールで出演したら、彼は二つの作品で「Walk this way」を言うことになるんだなあ。はあー。メル・ブルックスの長きにわたるファンとして、もしかすると歴史の目撃者になれるかもしれないんだなあ。お願いです、ロジャー・バート、アイゴール、やってください!

憤慨したカルメンがロジャー・デ・ブリーを呼びに去り、残されたマックスとレオはソファに座る。

キターーーー。唇クッション。木曜日には完全スルーだった唇クッションのギャグ。

おかしかったーーーーーー(爆)!! いやー、もう、たっぷりやってくれました。マックスとレオの間に、でっかい唇の形の異様なクッション。気になって仕方のないレオ。無視してほしいマックス。レオは、口をきゅっと結んだなんとも言えない表情で、どこにどう手を置いて落ちつくべきか延々と迷いに迷い、あれやこれや、とにかく考えつく限りの姿勢をとってみる。手を置くか置かないか、置くとしたらどこに置くか、からだの位置の上下、足は右を上に組むか、左を上に組むか、いや、いっそ組まないでおくべきか……最終的に、ほとんどソファからずりおち、唇のとんがった部分の角度に合わせて手を曲げて乗せた異様に不自然な体制で落ちつくレオ。マックス、困っている(笑)。おもむろに姿勢を普通に戻したレオ、マックスの肩をとんとん、と叩く。レオの方をマックスが見ると、レオ、両手で唇クッションをパクパクさせ、自分の唇は動かさず、腹話術のような声で、

"Hey, Max!"

これも定番ギャグだけど、もう、レオの仕草と反応のひとつひとつ、どっかんどっかん大爆笑。あー、これ見たかったんだー! 嬉しかったーー! マックスの肩を叩くのは、もしかして、こういうギャグに慣れてないトニー・ダンザだから? あるいは、お芝居になれてないお客さんへの「タメ」のだめ押し?……というのは考え過ぎかしら。コメディに慣れた人とコンビだったら、ここは合図せずにそのまま行きそうなものだけど。でも、とんとん、もおかしかったからいいや(笑)。

ゲイの館、うーん、やっぱりリームスさんがちょっと……。うまいんですけどねー。

リームスさんはさておき(さておいていいのか)定番のギャグはウケまくる。

「あなた(の匂い)を瓶詰めにできたら、脇の下にバシャバシャつけちゃう、毎日(はぁと)」と言われて凍り付くレオ。話す前からポケットに手を入れていたレオ、ポケットから手を出すとブルーブランケット……そのまま腕を斜め下向きにまっすぐ伸ばすと、まるでコソッと白旗を揚げているような……大爆笑。そして、漫画の卒倒寸前の人みたいな顔のまま、とことことこ……ではなく、超ダッシュでマックスの胸に飛び込む! しがみつく(笑)! 間を詰められるときは詰めてるのかな。「マーックスッ! 深みにはまってるぅぅぅ!」の絶叫がまた爆笑。

ニートニーの爆笑からデ・ブリーの歌。雰囲気はいいんだけど、どこか違う。ちなみに、これはリームスさんどうこうではないのかもしれないが「初めて知ったわ。第三帝国がドイツだって!」とか「そして(ドイツが)勝つのよ!」など、客席の反応がゼロ、というのはどういうことだろう。日本の映画館でもウケてたのに。とてもうがった見方だけど、もしかして、ユダヤ系以外の一般アメリカ人って、しかも新宿コマ/はとバス系のお客さんって、ドイツのこと何にも知らなかったりする(汗)? てゆうか、自分の国以外の国に全然興味ないから知らないとか? んなわけないか。

とても大切なI'll do it!のところ、倒れるマックスと支えるレオのタイミングはすごくおかしいんだけど、デ・ブリーの間が違うのでどうにもおさまりがよくない。ウケてますけどね、客席は。

わたしがおかしかったのは、やっぱりレオ(笑)。すみません、そこしか見てないのか、ってほどですけど、だってだってC列の真ん中! 見ないですませられますかっ! というより、面白くてどのリアクションも見逃せず、目が自然に惹きつけられちゃうんだからしかたない!

デ・ブリーのスタッフが次々と出てくる。「大きな」スコットに思いっきり引くマックスとレオ。レオはもう、この館にいること自体が怖くて仕方ない。そこに、シャーリーがずかずかと寄ってきて「(この台本に必要なのは)パイオツ!」。レオ、ソファのひじかけにしがみつき、ソファに座ったまま両足をクルクルすごいスピードで回して、アニメのキャラが走っているようなしぐさで逃げようとする。ひし、とそんなレオにしがみつき、逃がすまいとするマックス。大爆笑。

サブーに「後ろを取られて」、ハッと気づいた後の大あわてが、もう見事に古典的なリアクション芸で客席大爆笑。動きのキレとスピードが凄いので、まるでアニメを見てるみたい。あわあわしながら、後ろだけじゃなく、前も守ってました(爆)。

マックスから受け取ったシャンパングラスを、レオが浮かれて踊りながら、ひっくり返してもこぼれない(小道具だから当然)、不思議そうに下からのぞいてみる、という仕草をしたのは、あれはアドリブなのか、元から時々やってるのか? なんとなく、ノリノリのときに出る小ネタっぽい。それもバカウケ。とにかく大爆笑と大拍手でマックスの事務所にシーンはチェンジ。

来ました、ウーラ。ウーラが唄って踊る間の二人のリアクションはとてもキュート。とくに、ウーラが机の方に行ってしまったとき、ソファの上手寄りにぺたっ、とくっついてる二人はほんとにかわいい(笑)。そして、「ウーラ・ベルト!」……ベルトってのは、腹式の大声で歌うことですよね。映画のウーラは全然ベルトしてなくて残念だった。

そして、そうかー、こうなっていたのか。映画ではなかったけど(勘違いかな?)、最初のベルトの勢いが余りに凄くて、二人がふっとびそうになり、レオがソファの肘置きに必死でつかまる。マックスはレオにしがみつく。でも、次のベルトで結局ふっとばされて、ソファの反対側に投げ出されるマックスと、ソファで両足をVの字に上げて逆さまになるレオ(爆)。

秘書/受付嬢として採用! と言われたウーラがマックスをぎゅっ、レオをぎゅっ! ぎゅっ!されてレオ、上着の裾をつかむと、背中からずるずる持ち上げて、頭の上からすっぽりかぶり、しゃがみこみながら羊鳴き。変な格好でしゃがんでるレオを当惑して見下ろすウーラとマックス。立ち上がって上着を直したレオ、気まずい沈黙にあの低い冷静な声で「...I'm terribly sorry」。爆笑。もう、この"低音攻撃"は卑怯だって(笑)!

ウーラが帰った後、「今まで見た中で一番美人だ!」と感激し、「火山みたいな、熱い溶岩が身の内から盛り上がってくるような、こう、どんどん高く、高く……高く! なに? マックス、これは何?」

映画では、「あの」単語がマックスの答えだったけど、舞台では「……その件について、お父さんから何か聞いてない?」。レオが盛り上がっちゃった質問の体勢のまま小首をかしげるのがもうかわいいったらない。そんなレオにあわてたマックスが「もう少し大きくなったら教えてもらえるよ(あげるよ?)」ってかぶせるのもおかしい。言われたレオがまた、小首をかしげたまま、目を中空にうつろわせるのがさらにおかしー(笑)。お子ちゃまな脳みそで、何を一所懸命考えてるんだ、レオ(爆)! いくら下ネタ平気とは言え、さすがに「あの」単語はちょっと引くので、こっちの方が好きだなあ。

お馴染み、「Never, put your own money to the show!」。二回目のshow!のあと、「おうおぅぉぅぉぅ……」とエコーがかかって、二人が中空を見上げて「?」というシーンあり。これはトニーが入ってからの新規ギャグなのか、昨今の定番なのか、はてさて。

リトル・オールド・レディ・ランド。トニー、頑張ってましたけど、やっぱりダンサーズとストローマンの振付けの勝利ですね、ここは。圧倒されました。

全員が出てきて、ウェストサイドのクィンテットのようにコーラスを交錯させ、一幕終了。大拍手。


休憩中、またもやあちこちで「薬剤師」「デスパレート」って単語が飛び交っていた(笑)。そうそう、その人その人。あと「会計士の人、誰?」「知らない。でもすごく面白いね」とか、そんな会話も。うんうん、そうそう、面白いんだよー。トニー・ダンザ目当てのお客さんが、完全にロジャー・バートにも魅了された様子。やったね!