もうひとりのカルメン・ギア

ロジャー・バートはフランツ・リープキン役のオーディションを受けた。控え部屋に入ったら、彼以外は縦も横もがっちりした大男四人。やはり落ちて帰ろうとしていたら「カルメンの台詞を読んでみない?」と声をかけられ「ええ、もちろん喜んで」と臨んだトライアルでカルメン役をゲットした。それについてロジャー・バートは、


「リーディングでカルメンをやった素晴らしく才能豊かなマリオ・カントーンが舞台には出ないって決めてくれたので、チャンスのドアが開いた。そして僕の人生が変わった」


と語っている。盟友によれば「舞台のロジャーのカルメンはデ・ブリーの年の離れた妻といった雰囲気だったが、マリオだったら余裕のある熟女のカルメンだったかも」とのこと。それはそれで見てみたかったが、そうなっていたらロジャーのカルメンはなかったし、レオもなかった。人生、何がどう転がるかわからない。リーディング、オーディション、本公演の間には、様々なドラマがある。

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